スピノザの幸福論

N氏がゼミで話す予定の、「スピノザ哲学に於ける自由意思の否定」について何故か長々と議論した。
最初はどういう順序で説明をすればいいかを考えよう、ということで簡単に説明してもらいながら俺が質問する感じで議論したり、レジュメはどういふうにしたらいいかとか話してたんやが、途中で結論がよくわからんことに気付いた。自由意思が否定されるのはええが、その結果何が嬉しいのかよくわからんなぁ、と。一体発表として何が主張したいのか?という根本的なところが固まっていないことが発覚したことになる。


一旦休憩したあと、議論再開。

出た結論は、満足(幸福)な状態になるには、後悔をすることは妨げの1つになる。後悔をしないようにするには、スピノザが主張するような世界の見方をすると自然と可能になる、というような論法で行くのはどうか、ということになった。

以下、結論の個人的な解釈を述べておく。スピノザ的に合ってるかどうかは謎。

宇宙が一つ(神)であり、その前提の上では過去、未来といった時間の概念を考える必要はない、つまり現在しか必要がない。何故なら、あのときああしていれば…的な「if」の世界は存在しない(宇宙は1つである)のであり、今ある状態は全てあるがまま受け入れるしかない。また、未来という概念はあっても良さそうな気がするが、実際は現在の状況が刻一刻と(連続的に)変化していくだけであり、しかもその変化の仕方はその状況によってのみ決まる筈だ。これは物理的に考えても非常に自然なことだ。この考え方を人間の意識にまで拡大して考えると、人間の意識もその時の意識や記憶の状況によってのみ必然的に決定されるため、自由意志というものは存在しない、ということになる。

ここまで来ると後悔する、つまり過去を振り返って嘆くということは全く理に叶わないことになる。過去にした決断は、そのときの状況から必然的に決断したのであり、自分の意思の及ぶところではないのである。まぁそもそも自由になる意思がない、と言っているわけだ。

今回は後悔についてのみ着目したが、多分他のについても色々説明されてるんちゃうかなぁ、と思うが、発表時間が15分しかないらしいんでこんなもんでしょ。


しかし、スピノザはなかなか面白い。N氏から聞く限りでは、実に現実主義的なモデルを立ててるように思う。哲学にありがちなよくわからん概念が無数に出てくる、ということは本質的にはなくて、どちらかというと時間とか構造とか色々なものを捨てて、シンプルに捉えようという試みであるように思う。世界を抽象化するための小さいモデルを構築しているのだと考えると、実に良い仕事をしてるんではなかろうか。