安部公房 「他人の顔」

ようやく読了。個人的には面白かった。Interestingな感じ。
顔一面にケロイドを負った男は、どうしようもない疎外感を感じる。
顔の無い人間は人間ではないのだろうか?
男は精巧な仮面を作り、妻を誘惑しようと企てる。
何のために?他人との繋がりの回復のため?復讐?
その計画の一部始終を、男の心理状態を異常なまでに自己分析、論理を展開しながら
妻に対する独白の形式で綴られている、といった所。
随所に出てくる、様々な意見や考察が面白い。
特異な着想でもってして、現代人の心理を解体しているような印象を受けた。
ただ、最後のほうは先が読めてしまったせいか、小説としては加速度が足りなかった感有り。
しかし、それにしても最後に出てきた映画の話は良かった。
あれを読む為に、この作品を読んでもいいくらいだと思う。


えー、人間描写が生々しいので、そういうのが大丈夫な人にはお薦め。